製造現場では人手不足や多能工化の進展などから、現場担当者への負担が増大しています。
そのような中で、IoTセンサや生産管理システムで蓄積されたデータをAIで分析・活用する仕組みが普及しつつあります。



AIは人を「代替」せず「補完」

AI技術は全業務を一気に自動化するものではなく、現場担当者の作業を補完して負荷を軽減する形で導入されています。

すなわち、AIは人を「代替」せず「補完」し、作業の一部を自動化することで、人がより重要な付加価値業務に注力できるようになるのです。AI活用により「タブレット上での在庫確認」や「故障時の原因検索」など、現場の細かい作業が省力化されていることが報告されています。



作業効率カイゼンの第一歩:現場での帳票処理の自動化

現場担当者自身が気付いた「この部分の手間を減らしたい」という課題に対し、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を組み合わせて対処するケースが増えています。

現場での帳票処理の自動化は、作業効率カイゼンの第一歩であり、実際、成功例の宝庫でもあります。
例えば、各工場に多数存在する紙ベースの請求書・納品書・注文書などをAI-OCRで読み取ってデータ化し、そのまま基幹システムに登録する仕組みが構築されています。
大手システム会社の事例では、工場ごとに様式が異なる帳票を統一フォーマットへ電子化し、RPAでシステム登録まで自動化した結果、従来は担当者が手作業で行っていた照合作業や入力作業が大幅に減り、データ入力ミスも抑制できたと報告されています(なお、報告によれば、紙ベースではデータ欠落が電子入力の2倍発生すると指摘されています)。

同様の仕組みとして、大手食品メーカーでは、営業の運転記録など紙帳票6,000人分をAI-OCRでデータベース化し、「交通違反歴」「事故歴」など分析可能な形にしました 。これにより、帳票管理の効率化だけでなく、教育指導や事故分析にもデジタルデータが活用できるようになっています。



作現場で進む生成AI活用事例

日々の報告書・日報の自動生成・要約も現場主導で進められています。経験の浅い作業者が報告書作成に苦労する場面では、生成AIにフォーマットや内容例を与え、レポート案を自動生成させる試みが行われています。

ある調査では、製造業のデスクワーク担当者の約58%が「メール・文書作成」や「技術情報の検索・要約」で生成AIを活用していると答えており、社内文書の作成・整理にAIを使う動きが広がっています。AIによる要約で報告書の記述項目を標準化すれば、報告内容が明確になり、上司への情報共有や問題発見がスムーズになります。

以下は、現場発案で始まった生成AIの活用のほんの一例です。何れも、大規模データの集約・整理・DB化といった領域をAIに委ねたことにより、人がより高付加価値業務に集中できるようになったという事例です。

帳票自動化 AI-OCR+RPAで紙帳票を電子化し、基幹システムへの登録まで自動化。取引先ごとに様式が異なる帳票でも、AIで読み取り項目を抽出し、専用テンプレート無しでデータ化。経理や購買部門との連携もスムーズになり、入力ミス削減や業務標準化につながります。
品質・トラブル対応支援 AIによる検査支援やチャットボット型相談が可能。例えば、AIが外観検査で「不良品の可能性あり」と判定した場合、自動で不良種別を表示させ、検査員の判断負担を減らす取り組みが報告されています。また、設備保全では故障時にAIに相談すると、過去の類似事例と対処方法を提示してくれるシステムも実用化されています。大手製薬メーカーの事例では、保全担当がタブレットでトラブル内容を入力するとAIが過去の復旧事例候補を一覧表示し、参考にしながら対応できる仕組みが組まれています。さらに必要な交換部品の在庫位置もAIが指示するため、作業者は倉庫内を探し回る手間が省けました。
ナレッジ共有・教育支援 設備の操作手順や故障履歴などのデータをAIに学習させ、新人の質問対応や技術継承に活用。チャットボット化すれば「操作方法がわからない」「過去のトラブル事例を知りたい」といった問い合わせに即応答可能になり、個別教育の負担が減ります。大手精密機器メーカーでは、AIで社内業務ルールや技術マニュアルを自然言語化し、現場から手軽に検索・質問できる環境整備を進めています。

以上のように、AI導入のポイントは「現場の課題起点で、小さな業務から自動化・効率化していく」ことです。まずは日常業務のどこにムダがあり、どの作業をAI化すべきかを現場担当者が挙げ、その上で適切なツールを選定するのが効果的です。



まとめ

規模が小さくても現場で成果が見えることで、現場主導のカイゼン活動は加速します。AIは現場担当者の仕事を補完し、ムダを削減してくれるツールです。
本記事のような事例を参考に、まずは簡単な帳票処理や報告書作成からAIを活用し、徐々に活用範囲を広げていくことが、現場主導のDXを定着させるカギとなります。

このコラムを書いたコンサルタント
井上 康行

ソニーOB 現場改善コンサルタント
生産性改善・IoT改善、及び経営改善を得意とする。工程のムダ取りや品質向上、業務プロセスの最適化など、国内外多くの企業で実績をあげ、企業の持続的な成長や現場力の底上げを支えるパートナーとして、現場目線の支援を提供している。

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