TPS活動が順調に進んでいる会社では、従業員のほぼ全員が毎月数件の創意工夫提案をしています。カイゼン活動が会社全体のマネージメントの仕組みの中にしっかりと組み込まれていることで、一般従業員は安心してカイゼンに集中できるのです。
新型コロナウィルス第3波の襲来が予想以上に厳しく、鬱陶しくて暗い年末年始になってしまった。加えて、首都圏を対象にした国の緊急事態宣言の発令だ。ウィルスの勢いがいつまで続くのか、というのが今の多くの人の関心事であろう。
ウィルスの活性化は気温や湿度が低くなったためであろうが、落ち込んだ経済を回復するための政府の諸施策の影響もあるだろう。いずれにしても、今年も当分の間、自粛生活やWith Coronaの生活をしなければならない。
古くからの日本人の生活習慣、衛生観念、ルールを厳密に守る国民性等のお陰で、マスクの着用や手洗い等は欧米各国から見るとほぼ完璧に近く実行されている。また、公共の場での手の消毒液塗布の工夫、対面場所での飛沫防止のカーテンや衝立の設置等々、生活に身近な所での工夫がかなり行われている。それでもなお大きい第3波が来ているのだから、このウィルスのしぶとさや恐ろしさを感じざるを得ない。
そんな中で第3波を収束させるためには「新しい生活様式」を更に追求しなければならない。国民一人一人の更に高い意識と行動力が必要だろう。正に、全員参加の活動の継続だ。
「全員参加のカイゼン活動」、これはTPSの最も大きな命題のひとつだ。
TPSというのは、平時においても全員の力を結集して、会社の課題を解決しようというものだ。つまり、全従業員がより良い仕事のやり方を求めて、創意工夫をして諸課題を解決(カイゼン)しようというものだ。
実際、TPS活動が順調に進んでいる会社では、従業員のほぼ全員が毎月数件の創意工夫提案をしている。そして、職場には活力がみなぎっている。
こういう取組みをしていない会社からは、なぜ皆がそれ程多くの提案ができるのか?、という疑問が出てくる。
理由は簡単。
カイゼンすることが本人にとってとてもいいことだと実感できるからだ。カイゼンは会社が儲けるために行うということではなく、働く人一人一人にとって利点があるというのが基本だ。
カイゼンの原点と、マネージメントへの取り込み方
カイゼンの原点は、作業者一人一人が自分の仕事がやりやすいようにすることだ。
例えば、
等々、作業者が仕事の中でこの方がいいなと感じることがネタになっている。従って、カイゼンのネタは無尽蔵にある。しかも、一度カイゼンして上手く行かなければまたやり直せば良い。このような調子でカイゼンを進めるのだから提案件数は途切れることがない。
そしてこの積み重ねの結果、安全で、楽に、品質の良い製品が、効率よく生産できるのだ。
その結果として会社が儲かるようになる。
それなら経営者や管理者はいったい何をしているのかという疑問を持つ人がいるだろう。「全員参加」というのは経営者、管理者(監督者)、一般従業員等全ての人の参加である事は言うまでもない。大切なことはそれぞれの職位の人がどういう役割分担をするかということだ。
いろいろなやり方があるだろうが、私が勧めるやり方は、
経営者 | 会社の理念を持ち、その実現のための方針を明確にする |
管理(監督者) | 方針に沿って実行するための方策や行動計画を立てる |
一般従業員 | 計画に沿って確実に実行する |
勿論、それぞれのステップで上位と下位でしっかり議論し認識を共有することが重要だ。また、一旦決めたことの進度状況をフォローすることも重要だ。
いずれにしても、カイゼン活動が会社全体のマネージメントの仕組みの中にしっかりと組み込まれていなければならない。また、そういう仕組みがあるから一般従業員は安心して自分の身近な改題へのカイゼンに集中できる。
新型コロナウィルスの撲滅のために、国民皆がそれぞれの役割を再認識して全員參加で乗り切りたいものだ。特に為政者はしっかりした方針・方策・実行計画を立て、一般国民は新しい生活様式のために更にいろいろ知恵を絞らなければならない。
コロナの後には必ず活気ある明るい社会が来ることを信じて!
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このコラムを書いたTPS改善コンサルタント
林田 博光(はやしだ ひろみつ)
トヨタ自動車OB 田原工場副工場長
トヨタ生産方式を実践指導。溶接・組立技術が専門。
調達・生産管理などを包括した工場全体の改善活動を進める。各種工場の指導経験が豊富。