トヨタの海外生産、第1号はブラジルでした。1958年のことです。
今回は、ブラジル国内外の製造業改善コンサルタントとして第一線で活躍しているギナート氏に、日本企業の南米進出の現状について伺いました。
目次
1. 南米の日系企業の共通課題はありますか?
はい、南米で事業を展開している日本企業の共通課題は、南米だけに限定されず、発展途上国に進出している日本企業にも共通する典型的な課題です。
1. サプライヤーへの信頼性
日本企業にとって、南米での原材料や部品などのサプライヤーは、品質や供給の安定性において基準を満たしていません。原因は、文化・習慣の違いに関連しています。
2. 投資が必要な労働力
基礎教育の追加投資は必要不可欠です。労働者のレベルは低く、工場稼働のためには
彼らへ特別なトレーニングを行います。
3. 政府からの受ける影響
日本や他の国から部品などを輸入する場合、主要なビジネス手続きにおいて、政府・官僚が権力を行使し遅らせることがあります。
2. サプライチェーンに対する対策は?
大規模なサプライヤーに近づき、サプライヤーを管理・運用面でサポートすることが効果的です。そうすることによって、競合他社と価格と品質で差をつけることができます。
3. 日本からくる工場の責任者の強みは?
南米の駐在日本人幹部は常に、技術的に十分な準備ができ、強力なバックグラウンドを持ち、最高の経営を実行し、導くべき企業文化についての知識を十分に持つ専門家です。彼らは、非常に冷静で、統制の取れた、感情を自己制御できる高いレベルの人格者だと思います。
さらに、一般の人々、特に従業員の専門的および個人的な成長に関わる環境の開発に大きな関心を持つ傾向があります。
会社の良い結果が従業員の良い業績に依存する という考えは間違いなく強みです。
4. 南米の方にとって、日本の工場で働くことは?
私達にとって、日本の工場と他の国の工場で働くことは全く違います。
日本の工場は、結果を出す力と、標準化のレベルがはるかに高いと思っています。日本の工場で働くと、専門的な知識・経験が身に付くなど、能力開発と学習の機会が多いのです。
5. 南米全体の工場共有の課題は?
6. ギナートさんはコロナより前は、南米から多くの経営者が日本に改善を学びにくるスタディツアーを開催していました。彼らは、日本から帰国した後は、何か変化はありますか?
変化が本当にあります。彼らが帰国後に行うのは、トヨタ生産システム(リーンシステム)の実装を行い、改善策(カイゼン)を再現する試みです。
南米のビジネスマンや経営者は、一般に、トヨタ生産システムに触発された日本の経営モデルを、不安定なシナリオとますます競争が激しくなり競争の激しい市場に備えた、より堅牢で機敏で柔軟なモデルとして認識しています。市場は大変厳しい。だからこそ、日本企業から学び、経営管理システムの変更を実施する努力を行っています。
7. 最近のブラジルの大学・大学院生の人気就職先は?
私は改善コンサルタントの他、過去30年間アカデミーに携わり、現在はブラジルのラテンアメリカの数ヵ国の大学院プログラムの客員教授として働いています。
今、学生たちにとって、最も魅力的な企業は、情報技術、ソフトウェア、自動化、ロボット工学、人工知能、物流の分野で活動している企業であることは明らかです。
特に、Google、Amazon、Microsoft、Apple、iFood、Uberは人気です。しかし、堅実で長期にわたって安定したキャリアを提供する大規模で伝統的で堅実な企業も、例えば、ベール、ペトロブラス、トヨタ、日産、フォードなども、若い学生を魅了しています。
8. 日本企業へメッセージ
モノづくりの哲学は、ひとづくりを中心としています。モノづくりをベースにした日本企業の競争優位性は、製造と管理技術をインダストリー4.0の技術に完全に一致させ活用することで、グローバルなステージで日本企業は強化・拡大すべきだと私は確信しています。
▼海外の製造業支援サービス詳細はこちらから
海外の生産拠点サポート