今日は、現場改善による「生産性向上」についてお話しします。
結論から言うと、生産性はボトルネックを正しく特定し、そこを改善することで大きく向上します。
逆に言えば、ボトルネックを見誤ると、いくら改善しても成果は出ません。
製造現場では、経営資源である「人・モノ・お金」を効率よく活用するために、管理指標として「安全・品質・納期・生産性」を管理します。その中でも生産性は、利益に直結する重要な指標ですが、改善の進め方は工程の種類によって大きく異なります。
1. 改善の進め方 ~単体工程と連続工程~
まず、単体工程では、「人→方法→設備」の順で改善します。すなわち、作業のムダ取りや標準作業の確立といった人の改善から始め、次にレイアウトや治工具など方法を見直し、最後に自働化や高速化といった設備投資を検討します。
一方、連続工程(ライン生産)では考え方が異なり、「ボトルネック→流れ→同期→個別改善」の順で進めます。つまり、全体の流れを止めている箇所を起点に、全体最適で改善する必要があります。
2. ボトルネックの改善が、ライン全体を大きく向上させる
ここで最も重要なのが「ボトルネックの解消」です。
ボトルネックとは、「一番忙しい工程」ではなく、「全体の流れを最も制約している工程」を指します。見た目の忙しさではなく、「流量」で判断することが重要です。例えば、工程ごとの作業時間を比較した際に、最も時間がかかる工程が全体の生産能力を決めます。この工程を改善すれば、ライン全体の能力は大きく向上します。
ただし、ボトルネックは表面に見えている問題だけではなく、その裏にある“真因”に目を向ける必要があります。多くの現場では、トラブルの多い工程や忙しそうな工程に注目しがちですが、実際には前工程の遅れやバラツキが原因となっているケースも少なくありません。
では、どのようにして真因にたどり着くのか。ここで重要になるのが「正しい見方としくみ」です。
3. 真因にたどりつく、「正しい見方としくみ」
まず、第一に、「4M(人・機械・材料・方法)」の視点で問題を分解します。人の観点ではスキル差や負荷の偏り、機械では停止頻度や段取り時間、材料では供給の安定性、方法では作業手順のムダや標準化の有無を確認します。これにより問題の構造が明確になります。
次に、「見える化」です。5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底することで、異常がすぐに分かる状態を作ります。
5Sは単なる美化活動ではなく、問題発見のスピードを上げる仕組みです。また、IoTなどのデジタル技術を活用すれば、各工程の稼働状況や停止理由をデータとして把握でき、思い込みではなく事実に基づいた判断が可能になります。
そして最後に「改善」です。改善の基本は、ECRS(排除・統合・入替え・簡素化)です。
※ECRS(イクルス)は、業務改善の4つの視点「排除(Eliminate)、結合(Combine)、入替え(Rearrange)、簡素化(Simplify)」の英語の頭文字です。
不要な作業をなくし、工程をまとめ、順序や手段を見直し、作業をシンプルにします。重要なのは、いきなり設備投資に頼るのではなく、まずムダを徹底的に排除することです。ムダを排除して、人手で効率良く出来るようになってから機械化すると、設備投資額も低く抑えることが出来ます。
七つのムダ(イラスト参照)を、正しく理解することで、問題点の把握・改善立案と実施・改善効果は飛躍的に向上します。
4. 事例
実際の事例として、ある製造ラインで後工程に待ちが多いことが分かっていましたが、具体的にどのように改善すれば良いか分からず、長い間、放置されていました。
【表1】の工程ごとの工数を見てみると、溶接工程がボトルネックであることが分かります。
グラフ化することで、溶接工程がボトルネックと分かりますが、毎回発生している秒単位のムダは見逃す場合が多いです。この工程を改善(例:溶接機を2台体制)にすることで、生産性は飛躍的に向上します。
また、生産能力に余裕が有る場合は、2~4工程をまとめて、サイクルタイムを10秒として、2工程に集約することも可能です。
改善は、必ずしも正解が一つではありませんが、優先すべきもの(能力向上・省人・投資額など)を決めることで、改善方法を選択することが重要です。
最後に重要な点をお伝えします。
それは、「部分最適ではなく全体最適で考えること」です。一つの工程だけを速くしても、他工程が追いつかなければ在庫が増えるだけで、かえって品質リスクが高まります。生産性向上とは単なる効率化ではなく、流れ全体を設計し直すことなのです。
まずは、「どこが流れを止めているのか」を現場で観察することから始めて下さい。ボトルネックは問題ではなく、改善の入口です。この視点を持つことで、現場は確実に変わり始めます。
また、最初のボトルネックを改善すると、次のボトルネックが見えてきます。継続的な改善が重要です。
このコラムを書いたコンサルタント
川端武司
株式会社デンソーOB 生産技術部
トヨタ自動車よりトヨタ生産方式を習得し実践。また、工場新築2件と居抜き工場整備1件を経験し、工事日程と予算を計画通り進め、工場の入り口から出口までの情報・物流合理化を実現。
当時一棟で120,000㎡の日本一の工場建設を担当。
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